非常に流動的である!!

事前に曲順を決めず、ライブ中にくじを引いて
それで曲を決めていく。
4曲まとめてやったりするので、接合部分をどうするのかという相談をバンドメンバー達と少しする位で、曲はすぐに始まった。

こんなことが出来るミュージシャンは、一体何組いるんだろう。

めちゃくちゃなことをやっていると思う。
なかなかできることじゃない。
きっと完成度はバチバチで決め決めのライブよりは下がってしまうだろう。
そう思うのが普通だ。

が、めちゃくちゃに格好良かった。

人工的に作り出されたハプニングにメンバーは右往左往しながら、その自分達で生み出した苦難を自らで苦しみながら登りきる。
その度に楽しそうに歌う藤田さん。
発明だと思った。
ちゃんと積み重ねてきた人間にしか出来ないライブだろうけど、しっかり積み上げてきた藤田さんと藤田バンドだから、多少の苦難やハプニングは栄養に変わっていった。

これは凄いものを見せられた。
真似できるもんならやってみろ、と偽物たちに言いたい。
こりゃ、なかなか出来ることじゃないよ。
さすがモノホン!


日曜の昼間、新宿アンチノックに大勢のお客さんが駆けつける。
日曜とは言え、まだ昼の12時。正直ここまで人が集まるとは思っていなかった。
いつもより女性の姿も多く見られた。
やっぱ真剣に真摯に実直に純粋にやってたら、人には伝わるんだなって思った。

たくさんのお客さんの後頭部のせいでステージが見えにくいことも、他人事ながらとっても嬉しく感じた。

僕が北海道から上京してきた時、実は内澤くんという同級生と一緒だった。
僕はお笑い、彼は音楽を志していた。
そこで内澤くんが聞いていたハードコアってやつを、新宿アンチノックで毎日のように聞いていた。
鉄アレイさん観ながら酒飲んで暴れて倒れている人を何人も見たし、エヴァンスさんって人がぶん投げたマイクスタンドに直撃して血だらけで救急車に乗っていく人も見た。
あれから内澤くんは北海道に帰り、僕はアンチノックに行かなくなった。
けれど何の因果か、藤田恵名が新宿アンチノックで定期ワンマンを始めると聞いた。

アンチノックの階段を降りると20年前にタイムスリップしたようだった。
カウンターを抜け、良い匂いがすると思ったら何故かそこにカレーが売っていた。

とても美味しそうだった。

少し前、藤田さんに売れるってどういうことだと思ってるの?と、聞いたら

「バカに気付かれることだと思ってます」

と、言っていた。
それはつまり、私はバカになんか気付かれたくないって意味も含まれているんだと思う。
けど、バカになんか気付かれなくても、本物に気付いてもらったら俺は売れると思う。
それが一人だろうと、本物にさえ気付いてもらったら良い。
どうせバカなんか、本物についていくことしか出来ないんだから、本物は本物にさえ認めてもらえば、それだけで良いと思ってる。

日曜の昼に集まった多くのお客さんは、みんな味方で、みんな本物だと思う。

早く藤田さんが大きな野外ステージで歌ってるところが観たい。
また観に来てる、ただのファンじゃん!
まったく気持ち悪いなぁ。
そんなことを思われてしまいそうだから、今回は感想など書くのを辞めようと思っていた。

が、あまりにもライブが格好良かったのでやっぱり書くことにした。
この感動の恩返しは、文を書くことでしか出来ないと思ったからだ。

今日の藤田さんは、水着だった。
水着の上にスカジャンを着ていて、下はビキニだけ。
一見するとエロいだろう。
だが不思議とそうは思えない。

本日はガールズバンドがたくさん出るライブ。
ロックだ、パンクだみんなが言っていた。
その吐き出される言葉、鳴ってる音達には、やはり綺麗な服が着せられていた。
美しい化粧も施してあった。

それの何がロックなんだろう?
そんなに守るものがあって、何が伝わるんだろう?
僕は彼女がそう思ったんだと思う。
か、どうかは分からないが、二曲目から彼女はスカジャンを脱いだ。
服はない、水着で歌う。
けど本当なら、私は全裸でも関係ねーよ?
そう思ったんだと思う。

うちら芸人も、同じようなことを思う時がある。
いや、別に死んでも良いですよ、面白いんなら。
そんなにコンプラだとか倫理だとか、つまんねーもんに気を遣って細く長くなんて生きたくねーよ。
死ぬ勇気、あるんですか?

同じ匂いがした。

「青の心臓」
僕が初めて「ろくでもない夜」っていうライブハウスで聴いた曲だ。
その時は麻雀のイベントだったので「発の心臓」と歌詞を変えて歌っていた。
僕はこういうスローテンポの曲で、ここまで心底格好良いと思った曲は他にない。
それぐらいこの曲は格好良い。
特にライブで聴くと涙が出る。
今日は特に涙が止まらなくなって、一人慌ててた。

舞台上では様々なトラブルも起きていた。
それに対し、ヘラヘラ笑うわけでもなく逃げるわけでもなく、何の支障も来さずライブを続けていた。
すごく格好良かった。

まっすぐ生きてる人間のやることは、やっぱりノーガードで魂が震えてしまう。

絶対に売れるだろうなー。

今までバカにしてきた人間、全員見返してやったら良いんだ。