森岡利行オフィシャルブログ「監督日誌」powered by Ameba

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脚本家
舞台演出家
映画監督
プロデューサー
文教大学情報学部メディア表現学科非常勤講師

2024年5月4日土曜日みどりの日、唐十郎さんが亡くなった。

84歳だった。

 

 

危しくも亡くなった21時頃、わたしは多摩センターに

テント劇場、深海洋燈のお芝居を観劇していた。

(本来ならそちらの感想を書くべきなのだが……御免!)

 

この木馬を水の中で押して回すのがわたしの役目だった(笑)。

 

1980年に上京し、翌年わたしは状況劇場の入団試験を受けた。

合格し、稽古場に顔を出した時、21歳の誕生日だった。

その年、『お化け煙突物語』と『黄金バット』という作品を上演し、

翌年、『新・二都物語』で全国ツアーを敢行した。

すべてが修行の日々だった。

怖いものなんかなかったし、将来の不安もなかった。

 

テントで唐さんの話を聞く劇団員(わたしは右から二人目)。

 

わたしは唐さんの運転手をしていた。

その折、わたしがカーステで中島みゆきを聞いていたら、

「森ちゃん、これ誰」とか助手席で聞いてきて、

『黄金バット』のオープニングで「海鳴り」という曲を使っていたものだ。

現在はわたしが唐さんみたく娘や若い役者に「これ誰?」と訊いて、

芝居で使ったりしている(笑)。

 

左の端がわたし。隣が中原和宏。

 

唐さんの物真似をするとき、みんな高い声になる(笑)。

忘れられない言葉がある。

わたしが入団試験を受けた際、「どーゆー俳優になりたいか?」と問われ、

「テレビに出られる俳優になりたい」とアホな答えをしたわたしに、

唐さんは「いい俳優になったらいいタレントになれるけど、

いいタレントになってもいい俳優になれるとは限らないよ」

と真摯に答えてくれたのだ。

 

舞台下手の赤のツナギがわたし。

 

また、先輩の金守珍さん、佐野史郎さん、六平直政さんが飲み会で、

「君たちは、芝居を磨くことばかり考えている、もっと男を磨いてこい!」

と言われた言葉も忘れられない。

 

左から佐野史郎さん、坂本貞美さん、わたし、中原和宏。

 

唐さんは「特権的肉体論」の中で、

「偉大な戯曲が必要なのではなく、

劇的な役者の精神こそが戯曲を呼び起こすものである」

ということを言っている。

 

短い間しか劇団にはいなかったけど、

わたしの演劇人生はすべて唐十郎から始まっている。

釣りにも連れて行ってもらったし、

ゴールデン街にも飲みに行き、

大人になって初めて焼肉を食べさせてもらった(笑)。

 

ありがとう唐さん。

貴方に受けた多大なる影響は忘れません。

そして、ゆっくりおやすみ下さいませ。

 

きっと天国で前妻の李礼仙さんや寺山修司さん(奇しくも同じ命日)、

蜷川幸雄さんらと楽しく飲んでるでしょうネ。

 

合掌。

#唐十郎